Archive of posts from 2011-8

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出産に備えて読みたい本

有名なのでわざわざ紹介するまでもないんですが、シアーズ博士の書籍はどれも素晴らしいです。うちも夫婦そろって信者になりました。とりあえず「マタニティブック」と「ベビーブック」を揃えておくとよいと思います。内容が重複するところもありますが、両方買っておいて損はありません。

最近まで保母さんをしていたうちの母親が「抱き癖がつくからあまり抱かないほうがいいよ」などと平気で間違ったことを言ってました。あなたの両親の情報も古くて間違っている可能性があります。安易にアドバイスにしたがってはいけません。アドバイスを求める人は、病院の先生や看護師>シアーズ博士>両親の順番にしておきましょう。

ただし、シアーズ博士の本はデカいという難点があります。デカいのが嫌だという人には、日本の名著『定本育児の百科』が新書版で出版されています。こちらを購入してみるのもいいかもしれません。

シアーズ博士のベビーブックはトピックごとに分かれていますが、こちらは赤ちゃんの成長に合わせた時系列になっています。好みに応じて使い分けるとよいでしょう。

うちは両方購入しましたが、だいたいシアーズ博士の本を開いています。好みの問題でしょう。

[本] 『ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)』

先月の話になりますが、「翻訳された女」は、なぜ、「~だわ、~のよ」語尾で喋っているのか。 という興味深いまとめがありました。
確かに日常で使わない言葉を文章に登場させるというのは変な話です。
でも、実際に文章にしてみると、特に女性の言葉は難しいんです。
「職業翻訳者はやらないよう訓練されている」と書かれてありますが、本当かなあ? 嘘じゃね? 普通に見かけるわよ? とかなんとか思ってたんですけど、そこのコメント欄にあった『ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)』が参考になりそうだったので、さっそく読んでみました(つっても、読んだのは先月なんだけど)。

てよだわ語

実際に使われていたというのがおもしろいですなあ。当時の女子高生の言葉だったと考えるとなかなか興味深いっすね。それが死語になって、お蝶夫人のような「ギャグ」として使われるようになったと。それに、女性を示す役割語としても便利なので、文章にはよく登場する感じですかねえ。

ついでに、老人や博士がみんなマスター・ヨーダみたいな喋り方をするのはなぜかという話もありました。

老人語(〜じゃ)

こちらも実際に使われていた言葉がステレオタイプ化して「役割語」になったという感じですね。


翻訳に限って言うなら、男女を区別するのは難しいので、ある程度、役割語を使うのは仕方ないんじゃないかなあと思います。インタビューなんかだと1人でしゃべっているので改善の余地はあるかもしれないですけど、会話だと本当に難しいと思います。

本当に「職業翻訳者はやらないよう訓練されている」のであれば、その結果を見てみたいなあ。どこで見れるんだろうか。

bliki_ja:SemanticConflict

@:ooharakさんによる訳。

bliki:FeatureBranchもあるといいですねー(チラッチラッ)。

bliki_ja:OverloadedGetterSetter

@ooharakさんによる翻訳。ありがとうございます!

プロダクトバックログの項目は「優先付け」するんじゃなくて「並び替える」

現在、新しい『Scrum Guide』を訳しています(現在レビュー待ち)。今回の変更で気になったのが、プロダクトバックログの項目を「優先付け(Prioritized)」するんじゃなくて、単に「並び替える(Ordered)」という点です。

詳しくは、世界の破壊者 Jim Cope による「Ordered Not Prioritized」に譲りますが、端的に言えば「優先順で並べることが、必ずしもROIや価値を最大化するわけではない」ということです。先の例を借りれば、どんなに優先度が高くてもサンタの画像は冬に表示することに価値があり、どんなに家の屋根が気になっていても最初から屋根を作れるわけはない、ということです。

プロダクトバックログは時間軸を伴う有機的な存在です。全体最適を考えて、柔軟に「並び替える」ことが成功の鍵となります。このあたりは、パターンとパターンランゲージの活用に近いと思います。

では、どうすればうまく「並び替える」ことができるのか。kkd師父からは「ストーリーマッピング」を使って2次元で考えるのが良いのではないかという指摘を受けました。実際、Jeff の CSPO 研修ではストーリーマッピングが使われていたそうです。あるいは、リスクや難易度で並び替えるのもアリだと思います。先に難しいものを持ってくることで、早期に学習の機会が作れ、後半にベロシティを向上させることができます。あるいは、チームのタスクの種類が平準化するように並び替えるのもいいかもしれません。

ROIで「優先付け」してしまうと、POの責任だけが重くなってしまいますが、チーム全体で考えてみるところに意義があるんじゃないかと思います。

それから、『Scrum Guide』は今週中には先方に提出したいなーと思ってます。

[本] 『リトル・ピープルの時代』

「ビッグ・ブラザーとはウルトラマンであり、リトル・ピープルとは仮面ライダーである」という第1章のキャッチーすぎる言葉が指し示すように、本書は村上春樹という日本を代表する作家の作品と、ウルトラマンと仮面ライダーという日本を代表するヒーローを相互に参照することによって、私たち(卵)と世界(壁)との関係性を明確化するというものである。

以下、自分が気になったところだけを、自分の言葉で適当にまとめ。


ビッグ・ブラザーの時代の関係性はわかりやすい。問題は私たちよりも大きくて、権力を持っていて、私たちは大きなものから距離を取り、救世主(ウルトラマン)は私たちの外側からやってくる。しかし、その大きな物語が崩壊すると、何が正しいのか/自分が誰なのか、よくわからなくなる。でもやるんだよ!(逃げちゃダメだ)と息巻いてみるが、大きな物語は回復しないまま、世界の終わりは訪れないまま、リトル・ピープルだけが残される。村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』では、「私」が「やれやれ」と(消滅しかけた悪に対する)正義を執行しようとし、「僕」が個人として「責任」を取ることを選ぶ。

リトル・ピープルの時代(平成仮面ライダーの時代)には、大きな物語はもはや存在しない。自分が誰なのかよくわからないが、それでも問題ない(アギト)。「正義」はリトル・ピープルの数だけ複数存在する(龍騎)。そして、誰もがヒーローになり(555)、「僕(野上良太郎)」にいたっては、他者との「関係性」でヒーローになる(電王)。

その集大成が、自分が誰なのかよくわからないまま旅をし、「正義」はライダーの数だけ存在し、自らも他者に変身することができ、村上春樹の言う「壁抜け」をして、歴史を物語ではなくデータベースとして扱う存在……ディケイドだ(ディケイドに物語はない!)。ディケイドは、リトル・ピープルを破壊・接続するシステム(壁)として機能する。リトル・ピープルでありながらシステムのルールさえも書き換える、リトル・ピープル時代における「壁」が初めて可視化された瞬間だ(ディケイドは悪魔だ!)。

リトル・ピープル時代のもう1つの描き方は、他の世界を無視することで(「正義」をローカルコミュニティに限定することで)、システムとしての「壁」を嘲笑の対象とし、失われた「物語」をあえて構築することだ。それをすべての「責任」を取ろうとする「僕」(世界の終わり)と、正義の「俺」(ハーフボイルド)が再び「合体」することで実現している(W)。


オーズは描かれてないけど、オーズの話も聞いてみたいね!
あと「ダークナイト」の解説もよくまとまっていて、素晴らしかった!

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