[本] 『ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)』
先月の話になりますが、「翻訳された女」は、なぜ、「~だわ、~のよ」語尾で喋っているのか。 という興味深いまとめがありました。
確かに日常で使わない言葉を文章に登場させるというのは変な話です。
でも、実際に文章にしてみると、特に女性の言葉は難しいんです。
「職業翻訳者はやらないよう訓練されている」と書かれてありますが、本当かなあ? 嘘じゃね? 普通に見かけるわよ? とかなんとか思ってたんですけど、そこのコメント欄にあった『ヴァーチャル日本語 役割語の謎 (もっと知りたい!日本語)』が参考になりそうだったので、さっそく読んでみました(つっても、読んだのは先月なんだけど)。
てよだわ語
- 明治20〜40年頃に出現。
- 下層階級や芸者の言葉と非難されるくらい広まった。
- その発祥はお嬢様の通う女学校(初めての教育のある女性コミュニティ)だと思われる。
- 『女学世界』の投稿欄に「女学生ことば」を使った投書が集まり、若い女性の標準語として全国に広まった。
- 戦後、女学校という分類がなくなり、「お嬢様」や「女学生ことば」の共同幻想が崩壊する。
- その結果、女性の「標準語」から(想像上の)「お嬢様言葉(= 役割語)」となった。
実際に使われていたというのがおもしろいですなあ。当時の女子高生の言葉だったと考えるとなかなか興味深いっすね。それが死語になって、お蝶夫人のような「ギャグ」として使われるようになったと。それに、女性を示す役割語としても便利なので、文章にはよく登場する感じですかねえ。
ついでに、老人や博士がみんなマスター・ヨーダみたいな喋り方をするのはなぜかという話もありました。
老人語(〜じゃ)
- 老人語は上方風の言葉に近い。
- 武士の武家言葉は上方風の言葉だった。
- 江戸時代には各地の方言が入り乱れていた。
- なかには武家言葉を「標準語」として使うひとたちもいた。
- 江戸時代中期(明和期)に町人が「江戸の標準語(東国語)」を形成していった。
- 若者は新しい「江戸の共通語」をしゃべるようになった。
- しかし、老人は依然として「上方風の言葉」をしゃべり続けた。
- 医者のような威厳のある職業も「上方風の言葉」をしゃべり続けた。
- その結果、老人や博士などが「上方風の言葉(老人語)」をしゃべるようになった。
- 老人語は、物語のなかでヒーローを導く「役割」を担うようになった。(例:ヨーダ)
こちらも実際に使われていた言葉がステレオタイプ化して「役割語」になったという感じですね。
翻訳に限って言うなら、男女を区別するのは難しいので、ある程度、役割語を使うのは仕方ないんじゃないかなあと思います。インタビューなんかだと1人でしゃべっているので改善の余地はあるかもしれないですけど、会話だと本当に難しいと思います。
本当に「職業翻訳者はやらないよう訓練されている」のであれば、その結果を見てみたいなあ。どこで見れるんだろうか。