Archive of posts from 2001-9

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[本] 『良い経済学悪い経済学』ポール・クルーグマン

IT革命(笑)によってもたらされるのは、生産性の向上うんぬんっていう話だ(もちろん疑問符は付くけど)。で、その生産性の話がさらに進むと、国の国際競争力うんぬんっていう話になってくる。どっかの国の生産性が上がると、こっちの国の産業が打撃を受けるし、労働者の賃金は下がるし、 国際競争力が低下しちゃうのだー!!!・・・てな具合に。

でもね、「これは嘘だ」と、クルーグマン教授は言う。だって、貿易ってゼロサムゲームじゃないから。あっちの生産性がどーしてこっちに影響を及ぼのかね?と。たとえば、あっちが3%向上して、こっちが1%しか向上しなかったとしましょう。そしたら、どっちがどーなってる? どっちにしろ、こっちが1%向上したということには、変わりないよね。

もちろん3%向上した国は優秀だし、景気がいいんだろうし、とーぜん国際的な注目度は高くなる。が、決してこっちの国に悪影響を及ぼすようなことにはならない。あっちが良いからって、こっちの失業率が上がるなんて、んなこたぁないハズ。

そもそも、外部的な経済規模(貿易とか)って、そーんなに高くない。今の日本で言えば、まずGDPの半分が個人消費だとして、んで、そのうちの70%がサービスに支払うお金だと言われている(数字は適当)。残り30%のうち、どれだけが貿易によるものかね? たとえば半分だとしても、全体の10%程度だよね。

だから、生産性向上は国の国際競争力うんぬんにはつながらん、ってことが言われている。

で、だ。ここから重要なのだが、著者が言いたいのは「わかりやすさの弊害」ってやつなんだ。「国際競争力」っていう言葉は、すごーく分かりやすい。 日本に負けるな。アメリカに負けるな。ヨーロッパに負けるな。すごーく分かりやすい。でも、分かりやすければそれでいいのか? 分かりやすいっていう影に隠れて、なーんか重要なことを忘れちゃおらんか? クルーグマンは、こーゆーことを言いたいようだ。

[本] 『トヨタ式最強の経営』(柴田昌治、金田秀治)日本経済新聞社

かんばん方式っていうのはなーんだ?かんたん。生産方式でしょ?うん。いちおー正解なんだけど、それだと本質的なことは掴めないし、多くの企業が 同様の手法を取り入れた結果、かなりの確率で失敗していることの説明もできない。生産方式かつ、改善方式なんだよ。つまり、問題を顕在化するシステムでもあるんだ。いや、たしかに、それもある。あえてシステムを止めることで、問題点を浮き彫りにさせるっていうのは、すごーく出来たシステムだよね。

でも、それだけじゃない。いちばん重要なのは、「企業革新方式」であるという点だ。

この本にはこう書いてある。この仕組みから「常識はずれの自主的活動」が必然的に巻き起こされ、その結果生まれたアイデア、知恵を集大成して結実したものがトヨタ生産方式であると理解できる。つまり、問題点を顕在化するのみならず、more problem!! という風土さえも含めて初めて、かんばん方式っていうのが成り立つ、というわけらしい。

本書によれば、ハード的システムでは、何も変わらないんだと。それよりも人的ソフトが変わらない限り、どーしよーもないんだって。具体的には、関係や場の雰囲気、情報の共有などなど。それらを自然に培うことで、ハード的システムも、スペック以上の効果を表す。まあ、言われてみれば当然なんだけど、言われる前にやったのが、スゴいことらしい。

[本] 『シリコンバレーは私をどう変えたか』(梅田望夫)新潮社

雑誌の記事をまとめたもの。そのため、新鮮さには欠ける。しかし、米国におけるベンチャーブームを(後付で)知るには良い教材(かも)。そこから派生して、どうして日本においては変なベンチャーしか出てこなかったのか???など、考えてみるのもよいかもしれない。

[本] 『プロジェクトリーダーのための入門チームマネジメント』PHP研究所

能力のある人材を集めさえすればプロジェクトは成功するなどというのは幻想に過ぎない。プロジェクトの質によっても、プロジェクト内の人材(リーダー、マネージャー、メンバー問わず)の相関関係によっても、プロジェクトの在り方というものは変わってくる。同質グループだと、スピードは早いが画一的になる。補完(異質)グループだと、スピードは遅いが斬新なアイデアが出るなど、聞いて納得できることも書かれている。しかし、全体的に読みづらい。

[本] 『リクルートのナレッジマネジメント』日経BP

ストーリー形式で、ナレッジマネジメントとは何か?ということを簡単に教えてくれる。情報共有を突き詰めていくと、何のための情報共有か?という至極単純な問いに たどり着く。そこから「使われてナンボ」というようなシンプルな指針が出来上がる。これは今、我々が行っているグループプロジェクトにも通づるのではないか? 良書。

[本] 『なんとか会社を変えてやろう』柴田昌治(日本経済新聞社)

実践編。変革期に必要な人材というのは、経済成長期に必要だった人材(プレゼンが上手い、事務処理能力が高いなど)と同じではない。変革期に大事なことは「風土」を変えることである。TQM、SCM、シックスシグマなどの経営手法も風土いかんによって効果が変わってくる。そのためには、社員自らが「なんで?」と問う姿勢が大切になってくる。そんな人が全体の2割もいればだいぶ違ってくるであろう、という趣旨。

[本] 『なぜ会社は変われないのか』柴田昌治(日本経済新聞社)

ビジネスにおける「変革」というキーワードをテーマに、ストーリー形式で述べられた良書。企業変革を行うには、ハード部分(戦略、組織体系)ではなく「風土・体質」といったソフト面を重要視する必要がある。「言い出しっぺが損をする」ような風土では、変革など起こるはずもない。その風土を変えるために、オフサイトミーティングほか様々な提示がなされている。

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