プルリブス
Apple TV+には見るべきドラマがほとんどないが、「プルリブス」は数少ない例外のひとつ。めちゃくちゃおもしろかった。主人公は「ベター・コール・ソウル」でおなじみのレイ・シーホーン、制作は同作および「ブレイキング・バッド」のチーム。これでおもしろくないはずがないじゃないか。舞台は例によってアルバカーキである。
あらすじとしては、宇宙から「情報」としてやってきた未知のウイルスが人類に広まり、主人公を含むごく少数を除いて、ほぼすべての人類が「意識を共有」してしまうというもの。「我ら」は愛にあふれ、生き物を殺さず、ウソをつかない。誰かの喜びを糧に生きている。願い事をすれば即座に叶えてくれる。だってそれが生物的な反応なのだから。
しかし、その完璧とも言える行動は、主人公には「CMのように」きれいごとに映ってしまう。人間はもっとだらしなくて、ウソもつくし、自分勝手なのだ。そうあるべきなのだ。それが「個性」なのである。だが、意識を共有してしまうと、その個性がほぼ完全に失われてしまう。そうした危機感を持った主人公が、他の「生存者」に働きかけて世界を元に戻そうとするのだが、思うようにいかない。さて、どうする?という感じ。
「我ら」の振る舞いはいかにもAIっぽい。制作側は直接AIをテーマにしているとは言っていないが、現代の視聴者がAI的なものを連想するのは自然だと思う。こちらが何か質問すると、少し間を置いてから(他人の記憶や経験を横断的に参照して)答えてくれる。AIに触れた人間はその快適さに慣れてしまう。時にはAIに「恋」してしまう。おそらくこのドラマが突きつけているのは、実存主義的な問いだ。あらゆる問題を外部のシステムが解決してくれる世界で、自分は何のために生きているのか? 幸福であることと、生きていることは同じなのか? 人生を試行錯誤するところに「生きる」意味があるのではないか? という問いである。
こんな設定一発勝負のドラマなのに、全9話すべておもしろい。しかもシーズン1のラストは、あえて未確定のままシーズン2に持ち越される構成になっている。楽しみしかない。