[本] 『レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて

著者のブログは、RSSリーダに登録してあるのだけれど、読み応えがあるというか、読みにくいというか、だらだら長いというか、内容は良さそうだなとは思いつつも、いつも読まずに「既読」にしている。

そのブログの「コミュニケーション」カテゴリの記事が一冊の本にまとまったという。
いつも読んでいない分、腰を据えて読まなければと思い本を開いたが、これはすごい。
読みやすい。メディアが違うと、こうも受け取り方が違うのか。

と、書いてて思ったが、このことが本書の内容の一部でもあるわけだ。
内容は同じでも「言う」ことと「伝わる」ことは別だというような、
至極当たり前のことだけど、気にかける人があまりいない「些細な」こと。
それが、
医療現場での体験談や書籍からの引用を交えながら、
読者に「伝」えられている。

構成もすごい。医療ではミスはあってはならない(ので、他の分野では参考にならない)とかなんとか思ってしまいがちだが、後半の6章からは、ミスのメカニズム→ミスの発見→抑止力→謝罪と続き、さらには「訴訟になったら」という付録までついてくる。

なかでも感心したのが、
厳密な指示を与えると、
柔軟性がないために現場が「きちんと」やろうとしてしまい、
ミスやトラブルが増えるという指摘だ。
指示に「柔らかさ」を持たせることで、現場の判断が可能になり、
ミスのないチームができるそうだ。

前半(5章まで)は、汎用的なコミュニケーションについて説明されている。
「挨拶をする」「目線の高さをそろえる」といったごくごく基本的なものから、
「絆創膏で息子さんの死を伝える」や「受容可能侵襲量をコミュニケーションに応用する」など、
レジデント研修用ならではの例が散りばめられてあって本当に読んでいて楽しい。
コミュニケーションに悩んでいる人は是非とも読んでみて欲しいと思う。

先ほど「読みやすい」とは言ったけど、
ずっと同じリズムであまり起伏がないし、
否定(してはいけない)と肯定(したほうがいい)がごちゃ混ぜになっているので、
文章的には「読みにくい」し、
内容だってウキウキしながら読むようなもんじゃない(「面白く」はない)。

でも、著者の体験と熱量が「伝わる」本になっている。