[本] 『アーキテクチャの生態系 』
厚い割に読むべきところはないが、面白い。
第8章「日本に自生するアーキテクチャをどう捉えるか?」が特に面白い。
生態系
進化、ミーム、自然淘汰、ニューラルネットワーク、創発など。
部分が相互作用することで全体が構成されている(全体は諸要素の性質に還元できない)というシステム論的構図を持つもの。そこでは、全体を認識しているのではなく、いつの間にか秩序が構成されている。
自立・分散・協調的。非中央集権的。
Googleの「機械情報」と「生命情報」
- Googleは単なる機械情報とページランクという生命情報を扱っている
- 文脈(生命情報)を含んでいないのではなく、むしろ構成していると考えられる
都市としての2ちゃんねる
- スレッドのフロー
- コピペ
- dat落ち
信頼社会と安心社会
流動性が高い社会では、まずは見知らぬ他人の信頼度を高く設定しておいて、後から細かく判断・修正するほうが効率的。これを個人の「社会的知性」スキルと呼ぶ(山岸俊男)。→信頼社会
一方、流動性が少ない時は「内輪ひいき」が合理的になる。空気を読むなどの「関係検知的知性」が進化する。個人としてのスキルではなく、集団レベルでの知性。→安心社会
前者がブログ。後者が2ちゃんねるやSNS。後者では場によってキャラの使い分けが必要になることもある。
初音ミク現象
初音ミクのような「主観的」なコンテンツでも活発なコラボレーションが生まれるのはなぜか(客観的なWikipediaやオープンソースはうまくいっている)。#オープンソースについての記述は素人っぽい。実にもったいない。
それは、ニコ動特有のインタフェース(疑似同期)によって、コンテンツの評価基準が「客観的」と呼べるほど共有されているから。
恋空の「リアル」
評価基準を共有するユーザーにとっては「リアル(ありそう)」。
これはニコ動と同じ「限定客観性」を有している。
物語が「透明」(柄谷)から虚構を通じる「半透明」(東)になった。
日常を日常的な言葉で写生しても「リアル」にならない。
内面がケータイの操作で描かれている。
ハイエク
複雑な社会においては、資源の配分は難しい。そこで、価格というパラメータがコーディネートしてきた。「個々の参加者たちが正しい行動をとることができるために知る必要のあること」が少なくて済む。偶然手に入れたこの「市場」システムに頼らざるを得ない。このことを「自生的秩序」と呼ぶ。