[本] ビジョナリー・カンパニーを改めて読んでみたのでメモを書き散らかす

いろいろ思うところがあって、一連の『ビジョナリー・カンパニー』作品を改めて読んだんですけども、個人的にはやっぱり違和感があるなーという印象。

曰く、企業には基本理念やら基本目的やらが重要で、バスに乗せる人を選ぶのが重要で、システム作り(時計作り)が重要で、あげくはカルト文化を形成するのであーるとかなんとか。カルトといえば一番分かりやすいのはディズニー社ですね。キャストだのステージインだのアウトだの特別の用語を使ったり、独自のトレーニング機関があったり、どう見てもマッチョです本当に〜〜な従業員しかいない。企業文化に合わない奴は辞めればいい(辞めさせればいい)し、そもそも一緒のバスには乗せないことが重要。

そういった基本理念を守ると同時に、進歩を促すAND思考(陰陽の模様)も重要で、熱意を持って取り組むBHAGを設定して果敢に頑張れ!!とかなんとか。「偉大な」企業はそれを遵守してるのだそうです。

疑問に残るのは、何をもって「偉大」と言ってるかってことなんですけども、特別編によれば、「優れた実績」と「長期的に際立った社会的影響」を持ってる企業のことだそうで、そのアウトプットは

財務実績と株式運用実績

で測れるそうです。

企業理念とかないよ?

これとまったく異なるのが、『奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ』のセムコ社。そもそも企業理念なんかないし、長期計画も、キャリアプランもないよ?つーか、企業の成長とか利益とか社員数なんかは重要なことじゃないよ、と断言しています。

そんなことより、個人が働きやすい環境を作っていくことで(会社はそれを応援することで)、「毎日が週末」な環境を作っていくことこそが重要なんだと言います。”ワークライフバランス”ってやつですかね。

プライベートな時間のほうが重要な人もいるだろうし、昇給よりも働き甲斐のほうが重要な人もいるだろうし、逆に今は金が必要だって人もいるだろうし、それぞれの生き方によって会社のあり方も違ってくる。

前者は規律を作ることでその中に多様性が出てくると言ってますが、後者はそもそもの多様性を許している。

ただこれも、「そういう基本理念」だと言っちゃえば、基本理念になっちゃうので、いまいち反論にはなってないっすね。

それって単なるハロー効果じゃん?

『ビジョナリー・カンパニー』に真っ向から異議を唱えているのが『なぜビジネス書は間違うのか』で、結果だけ見て原因をたどっても意味なんかねーよバーカとバッサリ。

実際に調査したところ、”ビジョナリー・カンパニー”として挙げられている企業の実績はそれほど振るってないし、「針鼠のほうがいい」って言ってるけど、狐と針鼠の両タイプがいるって話を勝手に変えんなバカ!とかなんとか言って全否定。「ちょっとイイ話」は伝わりやすいし、俺だってイケるかも!?的な錯覚を覚えさせやすいので、エセ科学には注意が必要だよ!とも。

いちいち「それはすごいハロー効果ですね」と言っちゃうのでバカみたいな文章なんだけど、まあ、一理あるよね。

で、結局、どうすればいいのかって話なんだが

結局は、『ビジョナリー・カンパニー』は「組織戦略」に注力しすぎなのが問題なんだと思うよ。あらゆる戦略のうちで組織戦略が占める割合はそれほど大きくはない。まったくゼロというわけじゃないけど、それだけに注目しちゃうと全体を見失っちゃう。

『なぜビジネス書は間違うのか』では、ルービンやインテル社やロジテック社を例に挙げて、まずは何にしても不確定要素が存在することを前提にしなきゃいけない、ってなことを言っている。重要なのは、組織があーだこーだじゃなくて(そういう側面もあるかもしれないが)、毎度毎度の戦略の意志決定のほうが重要なんだってことが言いたいみたいだ。

その題材としては『インテル戦略転換』が良い教科書と言ってるので、次はコレを読んでみることにする。