[映画] 『嗤う伊右衛門 [DVD]』
原作が複雑すぎるので、それをそのまま切り取るとエラいことになるのはすぐに分かる。で、どう切り取ったかというと、副題に「Eternal Love」と付いてることからも分かるように、伊右衛門とお岩、2人の愛を中心に据えることにしたようだ。
まずは伊右衛門。伊右衛門は無口である。なにせ今まで「嗤った」ことがないのだから。そんな無骨者の外見だけで、その愛とやらを伝えることが果たして出来るのだろうか。たとえば冒頭、お岩に「すまない」と言う。その「すまない」の意味するところが全く描かれていない。これでは興の欠片もないじゃないか。画で伝えられないなら、原作の地の文も、役者の言葉に変えたほうが良かったんじゃないか。
次にお岩こと小雪。これが凄い。ハマり役。提灯をブチ壊しながら狂乱する様は圧巻の一言。すばらしい。ただ、これまた冒頭、又市との対面のシーンでのお岩の外見が頂けない。あまりにキレイ過ぎるのだ。婿をとるかとらないかという重要なシーンなのに、ちょっと軽かったように思う(原作のセリフそのまんまだし)。まあ、元が美人だからどうしようもないと思うんだけどさー。
結局、2人の愛を語りきれず、振り幅が大きければ大きいほどその価値は同一化してしまう、程度になっちゃってたんじゃないかな。お岩を斬るシーン直前の伊右衛門のセリフなんかその典型。
あと、細かいところを言うと、又市のストーリーがずたずたになっていた。ありゃないよなあ。組み立て方が悪い。伊東役の椎名さんの演技は良かったけど、キャラのバックグラウンドがこれまた描かれて無くて、これまた軽かった。残念。
- 原作: 『嗤う伊右衛門 (角川文庫 き 26-1)』